全部床義歯の勉強を進める際、「なんでこんなことしているのだろう?」「いまなんのためにしているのだろう?」と思ったことはありませんか?
全部床義歯の作製工程は多いため、ややこしくなることが多々あります。
なので今回の記事では、全部床義歯の手順をまとめ、なぜそのような工程が必要なのかという意義も含めて、理解を深めるために解説していきます。
概略とその工程の目的
全部床義歯の作製工程は以下の通りに行います。
【目的】どのような義歯を作るべきかを決定するための情報収集
【目的】印象採得や義歯製作を行う前に、支持・維持・安定を阻害する要因を取り除く
【目的】個人トレーを作るための印象
【目的】個人トレーを作成するための模型を作る
【目的】精密印象を正確に行う
【目的】最終的な義歯を作るための印象
【目的】全部床義歯製作の基準となる模型を作る
【目的】顎間関係の記録及び人工歯排列の基準を得るための装置を作る
【目的】人工歯排列の基準を設定し、審美性・発音・咀嚼機能・義歯安定性を確保する
【目的】上顎と下顎の位置関係を決定・記録する
【目的】咬合堤上に人工歯排列の基準となる線を記入する
【目的】患者固有の下顎運動を咬合器上に再現するために行う
【目的】記録した顎間関係を咬合器上に再現し、口腔外で人工歯排列や咬合調整を行えるようにする
【目的】咬合器上で人工歯を適切な位置に配置し、審美性・発音機能・咀嚼機能を回復するとともに、義歯の維持・安定を得る
【目的】排列した人工歯の周囲の義歯床用ワックスを整え、天然歯周囲の歯肉や歯槽堤の形態を再現する
【目的】排列した人工歯とワックスで形成された義歯床を患者口腔内に装着し、完成前に審美性・機能性・顎間関係を確認する
【目的】ろう義歯をフラスコ内で石膏に包埋し、ワックスをレジンへ置き換える準備を行う
【目的】埋没・流ろう後に形成された鋳型内へ義歯床用レジンを填入し、重合反応によって最終的な義歯床を作る
【目的】重合後の義歯表面を滑沢に仕上げ、口腔内で快適かつ衛生的に使用できる状態にする
【目的】重合後の義歯を再び咬合器に装着し、重合によって生じた咬合誤差を修正する
【目的】人工歯の咬合面を選択的に削合し、適切な咬合接触や両側性平衡咬合を付与する
【目的】完成した全部床義歯を患者の口腔内へ適合させ、咀嚼・発音・審美・機能を回復するとともに、義歯の維持・安定を確認する
【目的】義歯装着後に定期的な検査・調整を行い、義歯と口腔組織の調和を維持しながら長期的な機能回復を図る
これを見ただけで吐き気を催すぐらい工程がありますね…
また作業用模型や研究用模型などややこしい用語も多く登場するため、余計頭がこんがらがります。
作製工程の簡略化
工程が多すぎるので、ある程度まとめると簡潔になります。以下の流れは自分なりに工程をまとめてみました。
患者の口腔状態を確認する
患者の口腔状況を口腔外でも再現するために使う道具づくり
咬合床、上下顎位置関係、人工歯排列をして、患者の口腔外で作業する
口腔外で作った仮の義歯を元々の口腔内にフィットするか確認する
仮の義歯を、真の義歯に置き換える
調整をして完成
このように義歯を作る際、患者の口の中で作業するわけにはいかないので、患者の口の中の状況を口腔外にて精密に再現する必要があり、その再現する工程が多い印象があります。
混同しやすい用語
全部床義歯は似たような名前の用語が多いです。特に混同しやすいものをまとめます。
① 概形印象(予備印象)と精密印象(最終印象)
| 項目 | 概形印象 | 精密印象 |
|---|---|---|
| 目的 | 研究用模型作製 | 作業模型作製 |
| トレー | 既製トレー | 個人トレー |
| 記録内容 | 概略形態 | 支持域・辺縁形態 |
| 精度 | 低い | 高い |
| 次の工程 | 研究用模型 | 作業模型 |
概形印象=個人トレーを作るため
精密印象=義歯を作るため
② 研究用模型と作業模型
| 項目 | 研究用模型 | 作業模型 |
|---|---|---|
| 印象 | 概形印象 | 精密印象 |
| 用途 | 個人トレー作製 | 義歯製作 |
| 精度 | 概略 | 高精度 |
研究用模型で義歯は作らない。
③ 個人トレーと咬合床
| 項目 | 個人トレー | 咬合床 |
|---|---|---|
| 用途 | 印象採得 | 顎間関係記録 |
| 使用時期 | 精密印象前 | 咬合採得時 |
| 構成 | トレーのみ | 基礎床+咬合堤 |
個人トレー→印象
咬合床→咬合採得
④ 基礎床と義歯床
| 項目 | 基礎床 | 義歯床 |
|---|---|---|
| 時期 | 製作途中 | 完成後 |
| 材料 | レジンなど | レジン |
| 用途 | 咬合堤支持 | 義歯支持 |
基礎床=仮の義歯床
⑤ 咬合床と咬合堤
| 項目 | 咬合床 | 咬合堤 |
|---|---|---|
| 構成 | 基礎床+咬合堤 | ワックス部分 |
| 役割 | 顎間関係記録 | 咬合高径決定 |
咬合堤は咬合床の一部⑥ 咬合高径と下顎安静位
⑥ 中心位と中心咬合位
| 項目 | 中心位 | 中心咬合位 |
|---|---|---|
| 基準 | 顎関節 | 歯の接触 |
| 無歯顎 | 重要 | 存在しない |
全部床義歯では中心位を記録する。
⑦ 筋圧形成と精密印象
| 項目 | 筋圧形成 | 精密印象 |
|---|---|---|
| 記録 | 辺縁形態 | 支持域+辺縁 |
| 目的 | 辺縁封鎖 | 義歯適合 |
筋圧形成は精密印象の一部
⑧ スペーサーとストッパー
| 項目 | スペーサー | ストッパー |
|---|---|---|
| 目的 | 印象材スペース確保 | トレー位置決め |
| 位置 | 広範囲 | 限局部 |
スペーサー=厚み
ストッパー=位置決め
⑨ リラインとリベース
| 項目 | リライン | リベース |
|---|---|---|
| 修正範囲 | 内面のみ | 床全体 |
| 人工歯 | そのまま | そのまま |
| 適応 | 軽度不適合 | 高度不適合 |
リライン=裏打ち
リベース=床の作り直し
⑩ 実験室リマウントと臨床リマウント
| 項目 | 実験室 | 臨床 |
|---|---|---|
| 時期 | 装着前 | 装着後 |
| 目的 | 重合誤差修正 | 口腔内誤差修正 |
⑪ 支持・維持・安定
これは最重要です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 支持 | 沈み込み防止 |
| 維持 | 脱離防止 |
| 安定 | 横揺れ防止 |
支持→下方向
維持→上方向
安定→横方向
⑫ ニュートラルゾーンと歯槽頂間線法則
| 項目 | ニュートラルゾーン | 歯槽頂間線法則 |
|---|---|---|
| 基準 | 筋圧バランス | 顎堤位置 |
| 目的 | 安定性 | 咬合力伝達 |
ニュートラルゾーン=筋肉
歯槽頂間線法則=骨(顎堤)
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